北関東市のデリバリーヘルス『デリヘルA』オーナー:サトウさんを、実売十万部超を誇る有名風俗作家が直撃インタビューしてきた。

2018年の7月下旬、所要で北関東を訪れた。訪問先のIT企業での打ち合わせの終了後、先方の社長が『ぜひ会っていただきたい方がいるんです』とのこと。ボクは社長に連れられて待ち合わせ場所に指定された市内のデニーズへ移動した。
IT企業の社長がボクに会わせようと考えた人物は、北関東でデリバリーヘルス『デリヘルA』を経営する’サトウ’さん。約束の定刻に現れた彼の第一印象は『人当たりのいい青年実業家』といった感じだ。IT企業社長はボクとサトウさんを引き合わせると、『邪魔になるといけないから』と退席、ボクはそのままデニーズにて、サトウさんにお話を伺うことにした。
–サトウさんはどういう経緯で風俗業界に関わることになったのでしょうか?
「僕は昔、水商売をやっていて、そこから風俗の世界へ移ってきました。僕は中卒で、二十歳前までは仕事もしてなくて遊び回ってて、どうしようもない生活を送っていたんです。知り合いのおじさんで女の人とうまく接するのが得意な人がいて、僕はある程度気も使えてて空気も読めるので、『水商売やればいいんじゃない?』って言われて、それが水商売の世界へ入るきっかけとなりました。」
–やってみて水商売の世界はどうでした?
「最初はある北関東の街で働いて、そこから埼玉県の某都市市へ移って、最後は新宿歌舞伎町でも働きました。そこで感じたのは東京と地方の違いですね。売上は圧倒的に東京のほうが凄いんですけど、東京の場合はやらなきゃいけないことのハードルみたいなのがあって、それを見た時に『僕にはできないな』と思って、そこで気づいて水商売を辞めたってのもあるかもしれません。」
–都会はそれほど厳しかったんですね。
「僕はお客様の要望にも応えつつ空気を読んてお仕事をしていたんですけど、東京ではそれ以上の、たとえば一晩お客さんと一緒にいるとか、そんなことまでどんなところでも我先に喰い付いていかなければならない。これは厳しいなと感じました。」
–水商売の業界を辞められて風俗の世界へ移るまでの間は、どんなことをされていたのでしょうか?
「そこそこ貯金があったので、株やFXとかの取引をやっていました。最初のうちは結構取ったんですけど、勝負のときは一気に行かなきゃと思ってつぎ込んだら、一気に取られてしまうこともありました。」
–それで風俗の世界へ移られたわけですね。
「僕が勤めていた水商売の店のオーナーが風俗店を出店したんです。自店の客になっているいい子を入れれば簡単だろうって、ちょっとした安易な考え方なんですけど、水商売の店が風俗店を出店するというのはよくあることなんです。実は許可の取れない店舗型の違法店だったんですけど、『風俗店の赤字が続いているから助けてくれ』って声をかけられたので、『僕がお手伝いできることがあれば』って言ってスタッフに入りました。」」
–それは何年くらい前ですか?
「12年くらいになりますね。」
–12年間の間にとくに感じられたことはありますか?
「昔に比べて風俗にやってくる女の子の質が変わったなと思いますね。僕が風俗の世界へ最初に絡みだした頃は、高金利に詰まって無理やり働かされる方や、売掛が払えずに働くという方が、たとえば風俗嬢が10人いれば8人から9人は居たんですね。でも今はそういう子のほうが圧倒的に少なくて、ちょっとお小遣いがほしいって理由だけで来る子のほうが、ものすごく多いですね。」
–たしかに最近僕がインタビューした女の子からも、借金に漬けられた女の子のエピソードはあまり聞かれなくなりました。
「10年以上前はそれがメインだったと思うんですけどね。」
–当時の女の子のほうが目の色が違ってたような気がします。
「あと、『お店のやり方はこうだ』とルールがあるわけですけど、むかしの女の子は『はいわかりました』ときいてくれるんですけど、今はインターネットの発達によって、お店側はリードして入るんだけど、『私達の意見もちゃんと聞いてください。聞けないのであれば聞いてくれる他店へ行きます』って言われるから、女の子寄りになってるというところはあると思います。」
–女の子の側からすると、選択肢が増えたというのもあるのでしょうね。
「そうですね。」
–それで風俗の世界へ入られて、最初のお店が違法店だったと。そこからどのような変遷を辿ってこられたのでしょうか?
「最初の店が赤字だったので、『3ヶ月間給料はいらないです』と提示したんです。『必ず売上を上げるので、給料はその時にください』と言ったんです。でも『それはできない』と言われたので、それならと『では3ヶ月間は10万円だけください』と。『そのかわりに3ヶ月経ったら売上の中からお給料をください』と言いました。オーナーもその時はお金がなかったので、『じゃあ頼む』って話になったんですよね。僕は休みの日でも勝手にキャッチングに行ったりとかいろいろしたので、3~4ヶ月後には100万円くらいの黒字になって、半年後には毎月300~400万の利益が計上できるまでになりました。そのころはメチャメチャ働いていましたけど、給料が30万円くらいにまでしか上げてもらえなかったんです。僕は『もっと貰ってもいいくらい働いてるぞ』という気分がありましたけど、その頃にオーナーがフェラーリを買いまして、僕には言うなよと言ってたそうなんです。それを聞いて馬鹿らしくなってしまったんです。」
–その気持ちはわかる気がするなぁ。
「この店には友人も勤めていて、お店の中では僕と彼は同じ立場だったんです。オーナーは彼と仲が良くて飯やお酒に一緒に行くことが多かったんですけど、ボクは連れて行かれることはほとんどなくて、社長との間に距離ができているのを感じていました。僕は店をやめるとオーナーに伝えた後に、オーナーは某都市にキャバクラを出店することになって、『全部の店をまとめて面倒を見てくれるなら、月給100万出す』って言ってきました。でも『社長はここで金なんだ』と思って僕はイラっとしたんです。『すみませんが100万円とか200万円とかお金の問題じゃないので、ちゃんと引き継ぎをするので僕は辞めます』と伝えました。」
–なるほどねぇ。それで独立されたわけですね。
「そうです。」
–雇われた立場だった時と経営者に回った立場で、大きな違いはなんですか?
「とくに水商売時代売上制で自分の力量で数字が上げられるから、全て自分の考えで行き届くと思うのですけど、経営者に回ると人を使っていかなきゃいけないけどそれぞれのレベルがあるので、『そんなこともできないのか!?』って人たちもいるわけで、それは今でも苦労していますね。」
–独立されて今のお店を持たれてからは何年ですか?
「10年ですね。最初の頃は水商売時代の後輩がついてきてくれて、いろんなことに気がつき臨機応変に動ける人だったので、最初のうちは凄い儲かりました。始めたときのメンバーがその子ともうひとり知り合いを連れてきて、あとはアルバイトを入れたりして、ボクの給料を取ってない状態で月340万くらいの利益がありました。夏には2人に100万づつボーナスを出したりとか…。そういうときは自分の利益は減っても『オレは頑張ってる』ってみんな思ってるから、評価されたいと思うんですよ。評価はやはりお金であったりモノであったり、目にわかりやすいものが喜ばれるから、ボーナスは自分の取り分が無くなってもずっと出し続けているんです。」
–経営者の鑑ですね。
「ただ今年の夏は出せなかった。10年間のうちの2回目なんですよ。去年の売上は結構良かったんです。でも2年前に国税の市場調査みたいなのが来て、うちは女の子に本番だとかを絶対にやってはいけませんよと、書類に名前を書かせていたんですよね。うちの店は顧客管理を別の場所にあるサーバに全部上げていたんですけど、そこへ新規の客のみ登録していたんですよ。すると、よっぱらってビジネスホテルなんかに本名を書いてる人がいて、サーバに登録してる伝票と税務署が照合すると『名前が違う』って指摘してきたんですよ。『もう疑うならお客さんに電話してもいいですよ』って言ったんですけど、『これは疑わしい』って話になってしまって、名前が違うのが一番多い月の枚数 x 12ヶ月 x 4年 っていうのが認定されて、とんでもない金額を支払うことになってしまったんです。」
–痛くもない腹を探られてのことだったんですよね。それは辛いなぁ。
「税務署には本当に帳簿と違うものはないって話をして、その金額は流石に納得できないって話をしたんです。そしたら『じゃあ女の子を調べて見る必要があるかもしれませんねぇ。』って返事が返ってきたんです。」
–それって、脅しやがな…。
「『どうしますか? 決断してください。』って迫られて、『わかりました。判子押します』って応えました。」
–辛いなぁ…それは。
「税務署もかなり強引だなぁと思いましたね。やっぱり、いろんな店で入られてる話を聞きますよ。うちよりも長く経営しているデリヘルの社長さんと仲良くしているんですけど、その人のところへもむかし国税が入ってるんです。それで僕も入られたその日に社長さんへ電話したのですが出なくて、しばらくして折返しが来たと思ったら『うちにも来てるんだよ』って…。一昨年の2月の2日だか3日だかなんですけど、北関東のデリヘルに3店舗か4店舗同時に入ったみたいですね。
–ところで、サトウさんのお店である『デリヘルA』にはどんな層の女の子が集まっていますか?
「うちは未経験の女の子がどんどんと来るので『素人』はウリにはしてるんですけど、実際の話3~4年前くらいまでは本当に未経験の子が半数以上を占めていたんですよ。ちょっと変わってきてしまったのは、風俗の世界で出稼ぎなるものが流行していて、僕らには女の子は何も言わないんだけど、仲良くなってくると他の女の子やドライバーさんに『今度福島のお店に行ってくる』とか喋っちゃうんですよね。逆を言えばそういう子たちが当店にも来てるんですよね。(iPadに表示したお店のホームページを指さしながら)ちょうど今日出勤したこの子なんですけど、この子は全くの未経験で専門学生なんですよ。それも新潟から来てくれたんです。」
–いきなりデビューで出稼ぎですか? それは凄いなぁ。ボクが知っている女の子像とはまた変わってきている感がありますね。
「たぶんインターネットなんですよね。検索しまくってるんでしょう。未経験だから不安、不安だからものすごく調べるんでしょうね。すごく調べた上で、顔バレとかいろんなことを調べて、エリア街を含めて近隣のお店を探しているんです。」
–コンタクトのある地域によっての女の子の傾向の違いはありますか?
「東京からの出稼ぎの子はかなり綺麗ですよ。最近、池袋のお店に努めている嬢からコンタクトが来ました、。その子が勤めている池袋の店のほうがうちよりも給料が安いんですよ。たぶん東京都内の中でも池袋は給料が安い傾向があると思うので…。」
–おそらく日本で最高の風俗店密集地ですものねぇ。
「こないだは鶯谷の子が面接に来ましたよ。(笑)」
–サトウさんの表情で、どんな子が来たのかわかる気がします(苦笑)。
「頑張っていたけど違うエリアへ行かざるを得ない…という背景があるのでしょうね。1日いくらの保障が貰えるから行ってこようか…って大前提だろうなって気がします。」
–保証が貰えるから行くって考え方は『稼げるから行く』って考え方ではなくて、稼げないことが前提の考え方ですよね。稼げる子と言うのはどのような補償金額が設定されていても、ほぼそれ以上のお金を稼いで帰るわけで、そこはちょっと…って見方もできますよね。
「なのでうちは高額な保証は絶対に出さないし、それが嫌な子はうちには来ません。2~3年前に出稼ぎが流行っていた時に、『これは波に乗っておかないと、うちが遅れてしまって廃れてしまう』と思って、ちょっと出稼ぎの子を積極的に受けていたことがあったんです。10日間で20万円の保証を出したりして…。」
–保証という形でその金額を出してしまうと、お店にお金が残らないですもんねぇ。
「今はスカウトというのが横行していますが、お店はインターネットにそこそこお金をかけていて、女の子に65%~70%の給料を出して、スカウトマンにはねられてってなると、このままでは厳しいと思います。北関東エリアでは消費税を外税で取っているお店はなくて、みんな我慢して経営していますけど、来年10月の消費税アップ時にはどっかのお店が動くと思います。これが商品とするものが’物’であるならば、僕たちが我慢すればいいんですけど、商品が’女の子’なのでどっかへ行っちゃう可能性がある。そうと思うとなかなか…..。」
–今後はさらに消費税が上げられる可能性もありますからねぇ。でも今お話を伺っていると、お店にとって辛いことばかりじゃないですか。
「そうですね。何年か前からココ最近は厳しくなってきてますねぇ。でもずっとやり続けている責任もありますし…責任感で動いてるのは嘘じゃないですね。」
–『私は責任感だけでこの店をやってるんだ』っておっしゃる経営者は多いですよ。
「そうでしょうね。」
–未経験の女の子が多いからこそ、気をつけている点はありますか?
「未経験な女の子相手だからと悪質なお客さんもいるんですね。顧客管理を徹底的にして、ちょっと暇でもそういうお客さんは絶対に取らないようにしています。女の子にもその理由は説明して、つらい思いをさせないようにするからって伝えています。未経験の子と話をして不安がある子には、希望するならお仕事を教えるよって伝えます。とくに危険なこととか本番のかわし方とかを全部教えます。」
–本来、風俗の仕事とはどういうものなのか理解していない女の子が急増しているのが、この業界の大きな問題だとボクは考えています。果たしてお客さんに満足して帰ってもらえるような環境が作れるのかなと思うことがあります。
「未経験でやってくると仕事は少なからず戸惑うものだし、本番やられて適当にやってれば稼げると思ってる子もいる。でも稼げなければ店のせいにして移籍してしまう。それじゃあ稼げるわけがないんです。
最初にどれくらいお金が欲しくて、どういう目的で使うのかって話も訊きます。『ちょっと』って言われると、あまりきつく言われるのは嫌なんだろうなと判断して訊かないんだけど、事情がそれなりに複雑だったりすると、説き伏せて聞き出したりもします。」
–今後、このような夢や展望を抱いていらっしゃいますか?
「普通に税金をお客様から頂いて、クリーンに営業していきたいってのが一番ですね。たぶん数年後にはスカウトマンが駆逐されてるような気はします。勝手な推測ですが、そのときには多分ホームページの写真も動画に変わっているんじゃないかなと思います。正直もう1店もう1店と多角化を志したときもあったんです。でもひとつのものを突き詰めてしまうとどうしても気になって、もし何店舗も経営するとなると若干の『適当でいいや』っていう気持ちと、『そこはそうなっちゃったけど仕方がないよね。じゃあ次いこ』っていう気持ちがないとなかなか行けないんじゃないかなと僕は思っちゃうんですよね。いろんなことが気になって、完璧にしようと思うけど100%にはなかなかならなくて、それで1店舗に集中しているわけなんですよね。」
–なるほど。
「性格の問題なのかもしれませんね。」
–いやそれはマジメだからだと思いますよ。だってこの業界、不誠実な人が多いですから。だからこそマジメな人がこの業界には必要だと思いますよ。ところでサトウさんは独身ですか?
「独身です。前にお付き合いしていた女性はいるのですが、急な仕事が入っちゃって、飛行機に乗ってその子と旅行に行く予定を立てて…なんてことでもなければ、仕事の用事が入るとそちらを優先させてしまう。そうなると『ホント仕事が好きだね。じゃあずっと仕事と一緒にいればいいじゃん』って…。物分りの悪い子としかあまりつきあったことがなくて。水商売をやってたので昔から、女の子に携わる商売を20年続けてきて、空気で『この子、ウソ言ってるな』って感じ取ってしまうんです。危機管理能力としてはいいのかもしれないけど、個人としては悲しいですね。」
–ボクもそうだけど、マジメな男ほど女のウソが辛くなりますよね(苦笑)。
「『楽しい』の次は『辛い』が来ると思っています。売上の良かった年の次は必ず悪くなる。そうなった時にどう対応していこうかなと。売上のことだけだったら素直に考えられるんですけど、異性だとどうしても周りが見えない瞬間がたまにはありますから、そう考えるとそこで踏み込まないほうがいいのかなと思ってしまいますね。」
サトウさんは会話からもマジメな性格がにじみ出ていた。風俗業界の健全化と発展を真剣に考えている人物であった。次回はデリヘルA所属の女の子を取材させてもらう約束をしてこの日は別れた。サトウさんとデリヘルAの躍進を期待したいと思う。